諸謝金として商品券を渡した場合の消費税処理
2017/06/26
商品券の譲渡が課税仕入れになるか
講師に謝礼を支払う際に、現金ではなく商品券を渡しており、当該商品券を買う際の支払いを消費税の計算上課税仕入れにしてよいのか~という論点が、先日とある税務調査で論点になりました。
結果、課税仕入れ処理でOKでした。物品切手等の購入が非課税でも、それらをもって財貨又は役務の提供を受けた場合は課税仕入れとなるのと同じ話ですね。この場合では、商品券の購入時に非課税でも、その商品券という資産の譲渡をもって、講義をしてもらうという役務提供の反対給付を受けているからです(もちろん事業者が国内で)。仕訳をどのタイミングでどのようにきっているかによりますが、結果として課税仕入れとなります。
当然この場合、講師の方は講師料の受け取りを課税売上としているはずですが、そこは向こうの話ですので触れられませんでした(笑)
商品券を買って、そのまま使っておらず貯蔵品となっている場合、もしくは貯蔵品計上していなくても、そのまま手元にある場合は勿論非課税仕入れです。また、その商品券をお祝いや景品なんかで渡している場合も同様です。
商品券の購入があった場合には、その行先にも注意が必要ですね。
監査上の注意点
ここからは税務ではなく監査上の話で少し脱線になりますが、商品券は監査上も注意が必要でした。
実際は現金同等物で、非常に不正が発生しやすいものなのですが、会計上は現金同等物ではないため、現金同等物と同等のガバナンスが効いていない場合があるからです。
一旦オフバランスされてしまい費用科目になり、期末に棚卸で貯蔵品へ振り替える処理を行っている法人では特にです。購入時に貯蔵品計上されていて、毎月貯蔵品残高を誰かがチェックしていれば、まだ不正が発覚しやすいのですが、ほとんどの法人では購入時に費用処理されているのではないでしょうか。
実際、従業員の方が購入しその使用履歴帳と受領書を残していたのですが、その使用が本当に目的通りの使い方で相手方へ行っているかチェックする内部統制が緩くなっていたため、従業員の方が嘘の使用履歴帳と受領書を作成しており、横領していた事例を目の当たりにしたこともあります。
使用履歴が残る書類を作成しておらず、帳簿上で管理するのみといった法人さんでは特に注意が必要ですね。さらに商品券を扱っているのが担当者1人、もしくは偉い人1人であった日には、我々は心の中でクライアントさんを疑い、監査する手続に頭を回転させながら、それを表に出さないようにする(あからさまに疑ってかかると関係が悪化する)のに必死です。
ある程度の規模の法人さんになると、商品券周りの内部統制はガチガチなのですが、上場準備の会社等伸びる勢いに経営体制が追い付いていない会社等では、手薄なところもありました。
最後に
懐疑心をもつ必要があるのは会計監査上の話ですが、同様の手口で税理士を欺いて経費を水増しする脱税もありえますので、税理士としても懐疑心が必要です。税務調査の際に不正が見つかって追徴課税となったときに「そこまで見ていませんでした」というのは通じないです。チェックできる範囲にある限りはチェックすべきだと思います。いずれにしても悲しい話ですが、お互い信頼しているとしても必要が注意です。
商品券が帳簿に出てきたら、税理士としても会計士としても職業的専門家としての懐疑心をもって、消費税のみならず多角的にチェックしておくべきですね。