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株主総会議事録の雛形 役員報酬の変更がある場合

2018/08/10

3月決算法人の株主総会の時期は5~6月に集中しております。7月以降は我々も総会シーズンを終えて来年に向けて動き出している時期なので、比較的落ち着いています。

そんな中で、役員報酬の金額変更についてクライアント様から2点ご相談頂きました。

相談①役員報酬の月額変更を行いたいが、1人の会社でも株主総会決議と議事録が必要か?

結論から言うと、役員報酬月額変更時は議事録が不要ですが、後々に備え、事後となってでも作成しておくべきです。

なぜなら、税務署への届出書類がなくとも、役員報酬の月額変更は可能で、添付書類などで議事録を求められることもないためです。

その一方、税務調査のあった場合は、役員報酬の変更について議事録が残されているか確認があります。もしその議事録と支給額に相違があった場合、損金算入が認められない場合があります(議事録の記載ミスで通る場合もありますが。。)。また、社会保険関係で必要になる場合もあります。

よって、急ぎではなくとも議事録は作成しておきべきです。

ここで、1人会社ならば「みなし決議」があるから不要なのではないか?

と考える方もいらっしゃるかと思います。たしかに会社法の319条1項には、株主全員が同意の意思表示をした場合は、決議があったものとみなす定めがあり、株主が1人である場合当然に全員が同意したことになるため、決議はあったものとみなされます。しかし、会社法319条1項は「書面又は電磁的記録により同意の意思表示」とあります。

また、同2項には「決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない」とあります。

よって、何かしらの書面は法的に残しておくべきでしょう。

どのような議事録を残しておくべきか?

みなし総会決議用として各文章をわざわざ「~とみなす」としている書類を保管している法人さんもございますが、通常の株主総会議事録で差し支えございません。
私の場合、当初議事録は株主総会・取締役会・監査役会の議事録作成ガイドブックなどを読んでその都度作成していましたが、毎年のものですので、今となってはテンプレートから都度必要事項を書き換えて使用しております。

取締役である自分が議案を提案し、株主である自分が決議する、という議事録としては滑稽なものでありますが、それで構いません。定時株主総会の議事録雛形をWordファイルで作成しましたので、適宜変更しご利用ください。

当然ながら1人会社でない通常の株式会社でも利用可能です。株主総会議事録のテンプレートとしてお使いください。

定時株主総会議事録ひな形 役員報酬 月額変更

(株主総会で、役員報酬支給金額そのものを決める場合と、支給総額の大枠を株主総会で決めて内訳を取締役会で決める場合がありますが、ここでは前者のものです。)

相談②役員に賞与を出せないか

賞与というのは被雇用者である従業員に対して支給するもので、委任関係にある役員に対して賞与という概念はありません。支給することは可能ですが、定期同額要件を崩して役員報酬の損金算入が否認されてしまっては元も子もありません。

そこで感覚的には賞与と近いものとして、法人税法上、事前確定届出給与という定めがあります。事前確定届出給与の定めを用いることで、前もって税務署へ当該届出を提出しておくことで、定期同額で支給する役員報酬とは別に、一定の日に一定の額(株主総会で決定した支給日・支給額)を支給することは可能です。

この事前確定届出給与とは、定期同額給与とは別物であるため、もし届出金額を支給することができなかった場合でも、定期同額給与の損金算入が否認されることはありません。一方、定期同額給与を払っている上で、一時に支払う分について支給日と支給額が事前確定届出給与の届出と相違した場合、定期同額給与については損金算入されても、当該事前確定届出給与に係る分については損金算入が否認されます。

よって、実用的な使い方としては、定期同額給与を払っている上で、上乗せ分を事前確定届出給与として届出を出しておいて、定めた支給日に支払う金額を0%か100%か判断することになります。

ちなみに事前確定届出給与の書類提出期限は、株主総会決議から1月を経過する日、もしくは、事業年度開始の日から4月を経過する日、のいずれか早い日となっておりますのでご注意ください。

事前確定届出給与の議事録はどのようなものか?

事前確定届出給与の総会決議は、通常総会で定期同額給与の枠と同時に決議を行うこともありますが、臨時総会で定めることもあります。通常総会決議で定める場合は、決議事項に事前確定届出給与の金額と支給日をプラスするだけです。

そこで、ここではせっかくなので臨時総会の株主総会議事録として、事前確定届出給与の株主総会議事録雛形wordファイルをあげておきます。こちらも臨時株主総会議事録のテンプレートとしてお使いください。

臨時株主総会議事録ひな形 役員報酬 事前確定

こちらの議事録の要否についても冒頭で記載した通りですが、事前確定届出給与の届出書類を作成して税務署へ提出する必要があるため、同時に作成して保管しておくのが無難かと思います。

補足

最後に繰り返しになりますが、事前確定届出給与では下記の2点で指摘事項が多いのでご注意下さい。

①事前確定届出給与に関する届出書の提出期限

事前確定届出給与に関する届出書の提出期限は株主総会決議から1月を経過する日、もしくは、事業年度開始の日から4月を経過する日、のいずれか早い日となります。普通株主総会から1ヶ月過ぎて、決算日から4カ月以内で提出する場合は、臨時株主総会が必要となることにご注意下さい。逆に普通株主総会で事前確定届出給与の決議をされている場合は、決議日から1ヶ月以内に提出する必要がありますので注意が必要です。

 

②議事録記載の支給額・支給日に従って支給する

調査があった場合、必ず議事録の確認がありますので議事録記載内容と相違がないように支給してください。前述のとおり事前確定届出給与分は、支給日を守って100%支給するか0%として支給無しにするか、いずれかにしておかないと税務調査の指摘事項となります。

 

 

 

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